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G.8.2.1 線形化されたケーブルメンバー

ケーブルメンバーは、MEMBER CABLEコマンドを使用して設定されます。ケーブルメンバーの設定では、ケーブルの初期引張が与えられる必要があります。

ケーブルの剛性

荷重を受けるケーブルの長さの増加は、2つの効果の組み合わせによるものです。第1の構成要素は、弾性による伸張であり、よく知られているばねの関係に支配されます。

F = Kx

意味
Kelastic
=
EA / L

伸びの第2の構成要素は、形状の変化によります(ケーブルがきつく張られると、サグは減少します)。この関係はF = Kxでも記述できますが、ここでは次のようになります。

K s a g = 12 T 3 w 2 L 3 ( 1 cos 2 α )
意味
w
=
ケーブルの単位長さあたりの重量
T
=
ケーブル内の引張
α
=
ケーブルの軸が水平面となす角(= 0ではケーブルは水平、= 90ではケーブルは鉛直)

故に、ケーブルの"剛性"は、初期に導入された引張(またはサグ)に依存します。これら2つの効果は、次のように組み合わされます。

K c o m b = 1 ( 1 / K s a g + 1 / K e l a s t i c ) = ( E A / L ) ( 1 + w 2 L 2 E A ( cos 2 α ) 12 T 3 )
注記: T → ∞(無限大)として、Kcomb → EA/LT = 0のとき、Kcomb = 0となります。引張が増加(サグが減少)すると、組み合わせ剛性は、純弾性状態のそれに近づくことに注意してください。

注記

STAAD.Proでケーブルメンバーを使用する際は、次の点を考慮する必要があります。

  1. 線形ケーブルメンバーは、サグと初期引張の特性を持つトラスメンバーのみです。ケーブルメンバーの挙動は、トラスメンバーのそれと同じです。すなわち、軸荷重のみを伝達可能です。結果として、ケーブルメンバーをモデル化するときは、トラスメンバーのモデル化における基本ルールに従う必要があります。

    たとえば、2つのケーブルメンバーが同じジョイントで出会う場合、サポートがない場合、または3つ目のメンバーがそのジョイントに結合していない場合、その点は潜在的に不安定点になります。

  2. 上記1)の理由により、ケーブルメンバーに横荷重を作用させることは推奨されません。荷重は、ケーブルの両端にて2つの集中荷重に変換され、ケーブルの実際のたわみパターンは認識されません。

  3. 引張のみのケーブルメンバーは、両端に作用する圧縮荷重に対する抵抗を持ちません。メンバーの端部ジョイントが圧縮力を受ける場合、ジョイントが"降伏する"ことでケーブルにサグを生じます。これらの状況下では、ケーブルメンバーは剛性がゼロであり、このことを剛性マトリックスにおいて考慮し、変位を再計算する必要があります。しかし、STAAD.Proでは、メンバーがケーブルメンバーであることを宣言するだけでは、この挙動が考慮される保証はありません。
    重要: CABLEコマンドの後でMEMBER TENSIONコマンドを使用して、メンバーが引張のみのメンバーであることをユーザーが宣言することも重要です。
    このことにより、プログラムは解析後にメンバー内の力の性質を調べ、もしそれが圧縮であれば、メンバーを消去し、剛性マトリックスを再計算することが保証されます。
  4. 上記1)で説明した潜在的な不安定問題のため、ユーザーは、カテナリを多数の直線セグメントに分解してモデル化することも避ける必要があります。STAAD.Proのケーブルメンバーを、カテナリの挙動をシミュレートするために使用することはできません。

    カテナリとは、曲線特性を持ち、自重により軸力を生じる構造要素を指しています。この挙動は、実際には非線形挙動であり、軸力がメンバーの特性の変化によって、または大変形によって生じるかのいずれかであり、どちらも弾性解析では無効な仮定です。カテナリの典型的な例は、つり橋に使用されるU形のメインケーブルです。

  5. 作用荷重下のケーブル内の引張の増大に伴うケーブルの剛性の増大は、ケーブルメンバーもMEMBER TENSIONであると宣言されているならば、繰り返しごとに更新されます。しかし、繰り返しは、すべての引張メンバーが引張を受けるときに、または緩むときに終了し、ケーブルの引張が収束するときに終了するのではありません。